2003年12月13日

陋巷に在り〈13〉魯の巻読了

陋巷に在り〈13〉魯の巻 酒見賢一著読了。

面白かった。帯にはずっと「異色の孔子伝」と書いてあるのですが、これって孔子伝なのでしょうか?顔回伝だと思うんですがね。
なんつーつまらない突っ込みはこのくらいにしておいて、異色は異色です。表紙を描いている諸星大二郎の世界に近いです。顔回と南方の巫儒との壮絶な呪術合戦。今では道徳と化してしまった儒教のダークサイドなのです。
私が中国歴史物を好きになったきっかけが本書(と「後宮小説」)なのですが、歴史物として人に薦めるのは憚られます。ホラーじゃないですが、その手の魑魅魍魎云々がお好きな方には推薦です。

陋巷に在り〈1〉儒の巻の奥付を見ると、1992年11月発行となっている。10年以上も読んできたんだなと思うと感慨はあります。

(ネタばれを含むためここからは追記で…)

ただ、この完結編、孔子が魯で政務を執っていた間(つまり顔回が陋巷に在った)期間の話の完結編であり、放浪の旅に発つところで終わっています。この後の波乱万丈冒険記も非常に気になるところです。著者も書く気がないわけではない、というより元々は顔回が死に、孔子が嘆くシーンが描きたかったのだそうだ。続編が(多分違うタイトルで)出ることが非常に期待されます。
そういう含みもあって、完結巻となる本書は、落ち着いた雰囲気で幕を閉じます。もちろん宿敵小正卯との最後の戦いや、媚女との戦い(祓い)などスリルある展開でしたが、今までの子蓉との死闘や顔儒の滅亡に比べれば淡々としたラストだったと思います。

奥付を見るために手に取った1巻をちらちら見ていると、やはりほとんど忘れている。10年も前だから当然か。そして油断していると面白くて、また読みふけってしまいそうだ。
晏嬰が登場していることもすっかり忘れていた。中国歴史物といえば、宮城谷昌光。宮城谷さんの「晏子」は5年位前になるか、休暇でモルジブに行ったときに持っていってむさぼり読んだ。その時は陋巷にありに登場していたことは思い出さなかったが。同時代にいた傑物をそれぞれを主人公とした別々の小説で読むのは面白いとおもう。蜀中心の三国志(演義)にあって、蒼天航路などそういう位置づけかもしれない。日本の戦国時代が好きな人もそういう楽しみ方をしているのかな。

投稿者 iwazawa : 2003年12月13日 22:00
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